稲荷木ワークショップ
ソフトQカーによるスピード制御評価実験:結果の概要
2010.3 .4(2010.3.7部分修正)
小栗幸夫 千葉商科大学政策情報学部教授、ソフトカー・プロジェクトチーム代表

要約

2009年12月9日(水)、市川市稲荷木地区の生活道路(法定速度30km、約200m)で3台のソフトQカーの最高速度を時速30km、時速15kmに設定して走行し、参加者が異なる速度設定の結果生まれる道路の状態をどのように評価するかを明らかにする走行実験をおこなった。
ソフトカーは「道路にふさわしい最高速度を制御し、それを外部に表示する車」であり、ソフトQカーはその電気自動車版である。
約25人の参加者に評価用紙(本資料の末尾に添付)を配布し、参加者は、まず、道路の現状を5段階(良い=5点〜悪い=1点)で評価し、その理由を記した。
その後、3人の参加者がソフトQカーを運転し、他の参加者は観察者、あるいは歩行者となり、「速度制御なし」走行、「最高時速30km制御」、「最高時速15km制御」走行(交互に4回繰り返し)、最後に、「速度制御なし」走行をおこい、計10回の試走の状況についてソフトQカー試乗・観察・歩行の立場から5段階評価し、評価理由を評価シートに記した。 走行テスト後、対象道路にふさわしい法定速度や、実験の意義などを回答した。
16名の回答者(自治会等地元からの関係者7名、調査スタッフが8名、所属不明1名)の評価シートから得られた主要な結果は以下のとおりである。

対象道路の現状は、「悪い(評点=1)」、「どちらかというと悪い(評点=2)」の評価がほとんどで、評点平均は1.8と低い。 ソフトQカーの「速度制限なし」走行では評点平均は2.5となり、「現状」と比べて高くなった。これはソフトQカーが道路に登場したことのイメージ効果を反映していると思われる。
「最高時速30km制御」走行の評点平均は2.8であり、これは「速度制限なし」走行の評価と大きく変わらない。 これに比して「最高時速15km制御」走行の評点平均は3.9と顕著に高い。これは「どちらといえば良い(評点=4)」の評価が多く、「良い(評点=5)」の評価も見られることを反映している。

評価を立場ごとに見ると、「試乗」「観察」「歩行」のいずれの場合も、「最高時速15km制御」走行の評価が「最高時速30km制御」走行の評価と比べて高い。
「最高時速30km制御」の場合、「歩行」の立場からの評価が「試乗」の立場と比べて極めて低いことに対して、「最高時速15km制御」の場合、「歩行」の立場からの評価が「試乗」の立場からの評価を越える。
評価シートに記入された自由回答から。評価の理由となるキーワードを抽出した。
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「「最高時速30km制御」走行についての自由回答では、これをポジティブに評価する言葉は殆どみられず、「速すぎる」というネガティブな評価の言葉が頻繁(19回)に現れる。
 一方、「最高時速15km制御」走行では、「安心・安全」「手頃な速度」「周りが見える」「歩行者などと共存できる」などポジティブに評価する言葉の頻度が高い。一方、「(時速15kmは)遅い」「オープンなソフトQカーは寒い」というネガティブな言葉も多く記されていることも注意しなければならない。
16名の回答者中、14名は当該道路の適正な速度が時速15km〜30kmと回答し、その平均は20.9kmとなった。これは、自由回答で、時速30kmは「速すぎる」との回答が多く、時速15kmは「適正」あるいは「遅すぎる」という回答が多かったことと対応している。 回答者の中1名が「適正速度は時速30km以上」という答えた。
回答者中13名が走行実験の意義について答え、答このうち9名が「良かった」、3名が「どちらかと言えばよかった」と答えた。ネガティブな評価をした回答者はなかった。
 評価の理由として「普段意識していなかったスピードについて考える機会になった」「ソフトQカーに乗ることがたのしかった」などがあげられた。

走行実験に至る経緯と今後の展望


本実験は、2008年9月に独立行政法人科学技術振興機構によって支援研究として採用された「計画的な防犯まちづくりの支援システムの構築」の研究(代表者:明治大学工学部山本俊哉准教授)http://www.anzen-kodomo.jp/program/research/t_yamamoto.htmlの一環としておこなわれた。小栗はこの研究プロジェクトのメンバーである。研究スタッフが、明治大学、千葉大学、埼玉大学、奈良女子大学、独立行政法人建築研究所などから参加している。
市川市稲荷木地区で2008年6月に開かれた稲荷木小学校周辺の「暗闇診断パトロール」にソフトQカーが参加したことなどから「ソフトQカーと歩くまち」というキャッチフレーズが使われ、こどもの犯罪からの安全と交通被害からの安全をジョイントする試みが続いている。
ソフトカーの研究は2000年に国の公募にミレニアム・プロジェクトとして採択され、それ以来、技術開発、社会実験、普及のための広報などをおこなっている。普通乗用車をベースとしたソフトカーの制御速度は時速15、30、60, 100kmである。ソフトQカーの制御速度は時速2、4、6、15、30km/hであり、制御解除により最高速度は時速50kmとなる。
今回の稲荷木走行実験は小規模であったが、一般の人々や専門家がソフトQカーを試乗し、また、それによって生まれる道路環境を観察することなどから、住民参加により自動車速度制御の評価をおこない、また、道路にふさわしい法定速度をコミュニティの側から提案するプロトタイプが生まれた。これを基礎に、精度が高く汎用性のある社会実験の仕組みを構築することが課題である。

ソフトQカーによるスピード体感調査 評価シート



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